南西対談９／強いよ巨人、全員絶好調

●やな人・仁志、復活

偽仁志（ラジオ→テレビ観戦）：お産に夫が立ち会うケースをよく耳にしますが、プロ野球選手はそうもいきません。ジャイアンツの仁志（本物のほう。愛称ぴかちゅう）選手は初夏の風もすがすがしい５月25日、長女誕生の報を遠征先の福岡でききました。

偽南渕（テレビ観戦）：それがどうした。

偽仁志：嬉しかっただろうけど、でも自分はリードオフマン（１番打者）なのに安打が出なくて苦しんでいる最中だったと思う。

偽南渕：三振王らしいね、今。しかも、あの福留を抑えて。

偽仁志：そりゃつらかったでしょう。でも東京に戻り、赤ちゃんの顔を見て、なんだかいい人になってしまいそうな気持ちになったって言ってた。

偽南渕：だからどうした。

偽仁志：「こどもができたけど、いっそう勝負と家庭を分けて考えるようにしたい」、だって。そしたらきょう、みごとに２安打！

偽南渕：たしかに美談だね。それにしても先発ケンシン、ぴかちゅうは抑えたけど、調子悪すぎ。たしかに、みんな微妙な判定の後に打たれてたけれど、次の球が大甘だよ。

偽仁志：まだ仁志の話です。私はジャイアンツのキーマンは仁志敏久だと思います。去年、故障で彼を欠いた巨人は最下位まで落ちましたもの。

偽南渕：まーね。去年は、仁志が復帰したあたりからはいあがり、うちに挑みかかってきたんだよなー。

偽仁志：それから４番だらけといわれるジャイですが、２番に清水が、５番に高橋がいるのも巨人の恐さでしょう。とくに勝負強い高橋、これまではなぜか不調でしたが。

偽南渕：よりによって宿命のライバル川上ケンシンから二塁打を。

偽仁志：二塁打を３回、計５打席４安打１四球！　するどくひっぱる打球、そしてどすんと重たいセンター返し。彼も完全復活といえます。

偽南渕：さっきから何なんだ。

偽仁志：誕生。そして再生。命はつむがれる。そんな生命の躍動を感じさせる、きょうの試合でした。さようなら。

●明日はわれらのもの

偽南渕：帰るなっ！　きょう中日が何をしたかったのか、俺が教えてやる。

（１）
今日はＤのピッチャーすべてが高めに投げてＧの打者の目線を上げ、明日の野口の低めの投球に翻弄される下地作り、いわゆる「撒き餌」投球をした。

（２）
山崎と立浪は、きっちり２安打ずつ打って個人成績（打率）を上げ好調をキープ、明日につなげる打撃をした。

（３）
９回表の１０点差の状況で、調整登板で出てきた槙原を完膚なきまでに打ち込んでやっつけて自信をなくさせ、明日の緊迫した場面で出て来れないようにした。

偽仁志：３投手で１１点をもたらしたあの投球、四球やホームランの山も押し出しも、すべて明日のためなのですね。

●立浪応援コーナー

偽仁志：それではお待ちかねの立浪応援コーナーです。立浪は第一打席で上原からヒットを放ち、井上の同点打のチャンスメークをしましたね。これは予定どおりです。

偽南渕：だれの予定だよ。

偽仁志：私の。立浪さんは去年の９月、上原からライトフライを打ち、その直後にぎっくり腰で動けなくなって、そのあと５試合ほど休場しましたね。きょうはその続きだったんですよ。

偽南渕：で？

偽仁志：あの日、腰をやられなければ、それまでのようすから考えてたぶん次の打席で打ってたと思う。そもそも１９９９年の対上原チーム初安打は立浪だし。だから私はずっと悔しくて、上原対立浪の日をずっと楽しみに待っていたのだ。偉いぞ立浪。嬉しいっす。

偽南渕：珍しく素直に立浪をほめる偽仁志。誰かに脅されてない？

偽仁志：……。

偽南渕：（？）まあ、ともかくそのあとたっちゃんは大量差がついたこともあっていつもどおりおとなしくなってしまいましたが、最後は槙原からヒットで出塁、しかも相手バッテリーの虚を衝く盗塁をキメてましたね。

偽仁志：あれ、最後のほう見てたの？　なんか途中でどっかにいなくなったじゃん。

偽南渕：うちの中継ぎが相手の打てる球しか投げなくなったんで、つまんないから洗濯してクリーニングを出しに行って、そのあと買い物に行った。

偽仁志：家事してたんかい！

偽南渕：家事はだいじだよ。野球にのめり込みすぎて家庭が崩壊する奴って多いんだぞ。

偽仁志：そうだけど、家事は野球までに済ませるの！

偽南渕：いや、家庭と野球観戦を両立させてこそ、自立したファンといえるよ。俺も仁志（本物）みたいに、家庭と野球は区別してるの。

偽仁志：自立したファンって何じゃ…。それに仁志（本物）は槙原が打たれたからってセカンドの守備をサボって赤ちゃんのおしめ替えに行かないと思うが…。

　というわけで翌日５月２８日に東京ドームレフト側外野席に向かった偽者ふたりであるが、３点リードの５回裏、よくある話だがせっかく勝利投手の権利を得たのぐちんが５点もとられて逆転され降板。偽仁志は『南西対談10』の構想を練りはじめた。
「えーと、偽仁志：明日につなげたのはヨシノブのほうでしたね。とか。そういうとこから起こすか」

　ところがスタンドにそんな背信的ファンがいるとも知らない井上カズキが逆転決勝打と「カズキオリジナル・変なガッツポーズ２０００年第一弾」を決め、ギャラードが抑えて、ドラゴンズは９対８でジャイを下し、同率首位に戻したのである。
　偽者ふたりは試合後、ちゃっかりと応援団席に移動して大騒ぎし、敵地をあとにしたのであった。